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戦略の立案から実行まで、メンバーをリードする実力者。会社創業期から知り尽くす。「トヨタがカー用品店を始めると聞いて、「ジェームス」にアルバイトで入ったのがキャリアの始まりです」
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戦略の実行にあたって、重要な役割を果たした期待の星。「商社や物流企業を中心に会社説明会に参加するなかで、『ここでの仕事は”想い伝え業”です』という言葉に惹かれて入社を決めました」

タクティー(現トヨタモビリティパーツ)は、トヨタ自動車のアフターマーケット戦略会社として産声をあげた。卸売事業では、トヨタ部品共販店(現33支社)を通じて全国のトヨタディーラーを中心に補修用の部品を供給している。但し、扱っているのはトヨタ車用の部品だけではない。オリジナルブランド『DRIVE JOY(ドライブジョイ)』の名前で販売している補修部品は、トヨタを含む国内自動車メーカー各社のものを品揃えしている。
「トヨタ以外の自動車メーカー用の部品も自動車整備工場やガソリンスタンドなどに供給しています。つまり、“トヨタ以外のメーカー”に乗るエンドユーザーも、見過ごせないお客様なんです」
川崎がかつて籍を置いた“部品礦油(こうゆ)部”は補修用部品の戦略を担う部だ。
『DRIVE JOY』をはじめ、多くの補修部品・ケミカル品・オイル類を供給。仕入れはもちろん、販売戦略や市場調査、販促企画も手掛ける。
部品礦油部のなかでも、“部品室”では、約20品目のパーツを扱う。ブレーキパッド、ワイパー、スパークプラグ、バルブ・・・・・・。どれも定期的な交換が必要となる補修部品。車が走る限り、一定の需要が見込める商品だ。しかし、時代とともにマーケットは変化していく。

ロゴマーク

「マーケットは変化しています。例えばハイブリッド車が増えるなど、世の中を走っているクルマは常に変化していきます。つまり、クルマが変われば必要とされる部品も変わるという事です。マーケットの変化に柔軟に対応していかなければなりません」
2014年の商戦を迎えるにあたって、どんな戦略を打ち出すべきか。川崎たちは市場調査や販売動向の資料をもとに検討をつづけた。そして、あるカテゴリーに注目する。“軽自動車”だ。「自家用車の保有台数が横ばいをつづける一方で、軽自動車は今や保有台数の4割を超える勢いです。一方で、『DRIVE JOY』がカバーできている軽自動車の補修部品は、80~90%のカバー率ですが品目によっては40%程度のものもあります。指をくわえて見ている状況ではありません!」
軽自動車のアフターマーケットをおさえる。それを新たな戦略にした。カバー率を引き上げるため、川崎たちは開発・製造を委託するサプライヤーとの交渉を始める。とはいえ、クルマのパーツは千差万別。1品番をカタチにするにも最低3ヵ月はかかるという。
「たとえば私が担当するブレーキパッドは、車種によって仕様が違う専用品です。さらにグレードによって作り分けているケースもあります。ハードルの高さはハンパではありませんでした」
ここで忘れてはいけないことがある。品物を揃えたとしても、注文が入るとは限らない。メンバーの一人、当時入社1年目の豊田が託されたのは、数ある競合商品の中から“いかに『DRIVE JOY』を選んでもらうか”だった。

DRIVE JOYの商品

「注文は、私たち卸売業者が配布する“カタログ(部品適合表)”で行われます。必要なパーツが載っているページを見つけ、その品番で発注する。逆にいえば、“見つけてもらえない=売れない”わけです」
お客様の手元にあるのが『DRIVE JOY』のカタログだけとは限らない。他の部品メーカーにも同じようなカタログが存在する。豊田は決断する。
「他の卸売業者にはなかった“軽自動車専用のカタログ”を制作して攻勢をかけることにしました。こだわったのは、“読者のメリット”を徹底的に追及することです」
お客様の声として感じ取っていたのは、「部品によって注文先が異なること」が最も煩わしいということ。
「大事なことは、“1社ですべての部品が揃う”こと。そのためにも、車種や品目を広くカバーすることが不可欠でした」
編集長となった豊田は、ある試みに挑む。「“品目別に分冊する”のがこの業界の常識でした。僕が出した答えは、全品目を網羅した上で“車種別に編集した1冊にする”こと。そうすれば、部品を調べる手間が減ります。とはいえ、載せる情報は車種・年式・グレード・品番・検索キーなど多岐にわたります。単純に整理しただけでは見にくく、1冊にすることが逆にデメリットになる。悩ましい毎日で、何度も心が折れそうになりました」
より見やすく、検索しやすいカタログはどうすればできるのか。豊田の試行錯誤は数ヵ月に及んだ。

品目別のカタログ(部品適合表)

『DRIVE JOY』の新たな戦略が動き出してから6ヵ月後。踏み出すための環境は整った。
「カバー率は部品全体で80%まで到達させることができました。軽自動車用については重点課題なので、気を緩めずに今後も品番設定をしていきます。将来の需要をいかに読むかが重要ですし、立てた戦略からブレてはいけない。そう思っています」豊田は、配布日に滑りこむようにカタログを完成させた。
「検索しやすいようにインデックスを設けたり、誌面のデザイン・レイアウトを工夫して、何とか満足のいくものができました。硬いイメージの表紙が多い中、親しみを持ってもらうため、表紙に女性モデルを起用したものもポイントです。いかに手に取って、開いてもらうかが大事ですから」
軽自動車カタログは大好評を博した。2万5000部を印刷したが、これは部品適合表としては最多で、今まででは考えられない数だった。
「トヨタ部品共販店から“こういうカタログが欲しかったんだよ!”と評価をいただいて、達成感は格別でした。僕はバルブを担当していますが、どうマーケットの先を読み、先手を打っていくか、自分の“想い”を伝える仕事をしていきたいですね」
とった戦略の効果が出るまでには時間がかかるものだ。しかし、軽自動車用部品の売上実績を見てみると、取り組みの成果は確実に出始めているという。

軽自動車専用カタログ